軽井沢で新築、わくわくしますよね!
せっかくだし理想の見た目のおうちを建てたい!
でもちょっと待ってください。
外壁は家の見た目を決めるとともに、家を守る大切な役目が。
軽井沢は、湿気が多く、野生動物もわんさか。
冬になると-20℃もの寒さになる、環境の厳しい土地です。
せっかく理想の外観で家を建てたのに、そのせいでメンテナンス費用が馬鹿にならない、なんてこともあり得ます。
そんな軽井沢に適した外壁素材は何でしょう?
- 湿気とかすごそうだけど、どう対策すればいいの?
- ぶっちゃけコスパのいい外壁素材は?
- 逆に選ばない方がいいのは?
- せっかくだし、素敵な別荘風の外観にしたい
- 周囲の家から浮きたくない
- 都心と気候条件の違うところは?
この記事を書いたのは:
私は、幼いころから毎夏軽井沢で過ごし、軽井沢が大好き。この度、子供が2人生まれることを機に、軽井沢に新築を建て、東京23区から移住することにしました。大切な家族との移住、お金もかかるし、絶対に失敗したくない!!
この記事では:
そんな私が外壁選定をする際に、調べたあれこれや
地元の建築に詳しい工務店さん5件、建築家の伊礼智先生などプロフェッショナルの方にお伺いした意見をわかりやすくまとめています。
この記事を読むと:
軽井沢で新築をする際の、外壁の選び方がわかります!
結論は
・基本的には好きなものを選んでOK
・建築基準に沿って、景観を守る
・どの素材もメリットデメリットがある
・それぞれの素材をしっかり知ったうえで自分の感性に合うものを選ぼう
我が家が敷地に合った外壁を選んだプロセスを追いながら、
以下で詳しく説明していきますね!
目次:
1.外壁の色も制限が!?厳しい軽井沢の建築基準
2.窯業系サイディング
3.金属系サイディング(ガルバリウム鋼板)
4.左官壁
5.木張壁
まとめ
1.外壁の色も制限が!?厳しい軽井沢の建築基準
以前の記事でもご紹介しましたが、
実は軽井沢には、日本一ともいわれる厳しい建築基準があります。
建物の外装にも言及されており、保養地(別荘地)が一番厳しいですが、都市部や沿道もおおむね同じような条件が設定されています。
要約すると
- 表面に着色していない自然素材、金属板、スレートなどの素材色はOK
- 着色するなら、彩度4以下、明度7以下(暗くて地味目な色!)
- 特に、緑、青、紫、桃、赤、黄などはなるべく使わないで
という感じです。
- アメリカンなカントリーハウス
- 真っ白な洋館
- 地中海っぽい太陽に映える原色のヴィラ
こんな感じはやめてねってことでしょう。
ここからは各素材の解説と、メリットとデメリットをまとめていきます。
2.窯業系サイディング
窯業系サイディングは、最もよく使われている(全国シェア8割程度)外壁材です。
いわゆる石膏ボードみたいなのの表面に、いろんなプリントが施されていて、そのボードを表面に張っていくスタイルのもの。
【メリット】
- 初期費用が安い(建物を建てる時点での出費は一番安いです)
- レンガ柄、タイル柄、木柄など、いろいろあって楽しいし、技術が上がって、グレードが高いものは結構リアル
- 施工が簡単で工期が短い(軽井沢は工事が地面が凍り基礎が難しい冬や、7月末から8月いっぱいは工事ができないので、その点は有利)
【デメリット】
- パネルを貼っていくので継ぎ目がどうしても目立つ
- 風景の中にしっくり収まる、上品で美しい住宅、という感じにはどうしてもならない(私の個人的な感性です)
- コーキングの継ぎ目の耐用年数は5~10年ほど(コーキング剤のグレードアップや継ぎ目を隠す技法などでも15年ほど)
- メンテナンスするためには、再度足場を組んで全て張り替えなくてはならない(足場を組むのが結構コストとして高い)
- 導入コストは比較的安価だが、長期で見るとコストが嵩む印象
- データはないが、湿気が強い、寒冷地だと、より耐用年数が短くなる気がする。
ちなみに、「メンテナンスしなくていいんじゃね?見た目がちっとぼろっちくなるだけでしょ?そんなの味だから気にしないし」というのは悪手のようです。
高いお金をかけて、しっかりとした高気密高断熱住宅をせっかく作っても、そこから湿気や水分が入って壁内をぼろぼろにして、取り返しがつかなくなるので、目先のお金をケチって、大切な物件の価値を不可逆的に落とすことになってしまうとのことでした。
窯業系サイディングは、最初は安いけど、結局高くついちゃうのか。
3.金属系サイディング(ガルバリウム鋼板)
金属系サイディングは、いわゆるガルバリウム鋼板
屋根などに用いられることの多い金属の板を、外壁にも用いたもの
【メリット】
- しっかり設計をすると、シンプルモダンでかっこいい雰囲気の建物になる
- 耐用年数が長い(30年くらい)
- 窯業系サイディングより値は張るが、比較的安価
- 軽くて耐震性もある
- メンテナンスが少なくて済む
【デメリット】
- ちゃんと設計しないと、倉庫や物置みたいな感じを醸し出す
他デメリットで
- 薄いので防音性が低い
- 黒とか使うと夏熱い
- 塩害に弱い
というのがありますが、軽井沢で隣家と密接しておらず、森の中ならまず大丈夫でしょう。
ところで、ガルバリウムは使い方によって、印象が左右される素材です。
この度、建築家の伊礼智先生に設計をお願いすることになり、
改めて、ガルバリウムの特徴を伺うと
- 玄関やサッシ、バルコニーなど美しい木をポイントで使って
- 全体のプロポーションを意識し
- 出角をうまく処理し、配管や雨樋、室外機などをうまく隠すと
洗練されたシンプルモダンな感じになるということです。
(枝葉末節では違ったかもしれませんが、ご主旨はこんなところだったと思います)
伊礼先生も、都市部の建物では、ガルバリウム鋼板を使われることも多々あるとのことで、先生がタニタハウジングウエアと開発されたZiGなんかは、波が面取り加工もされてて、本当に上品です。
ガルバスパンドレル ZIG
http://www.tanitagalva.com/products02.html
当初は我が家も、耐久性も高くコスパの良いガルバリウムで、と考えていたのですが、ここで一つ問題が。
うちの敷地みたいに木が鬱蒼としているところは、雨樋を作ると詰まってしまうとのこと。
そこから逆算して、雨樋をつけないならば、軒がしっかり出ていないと建物を痛めてしまうとのこと(雨が外壁を伝ってしまうので)
そして、ガルバリウムの外壁で、軒がでているのはあんまりかっこ良くないとのこと。
そもそも軽井沢の建築基準にも、「しっかり軒を出すこと」というのがありました。
トータルで考えると、うちの敷地にはガルバリウムは合わないだろうとのことで、我が家では採用を見送りました。
4.左官壁
次に候補に挙がったのが、継ぎ目のない自然素材で左官屋さんが塗ってくれる外壁、左官壁でした。
代表的なものは、漆喰やそとん壁(鹿児島の高千穂シラスの壁)
比較的白っぽい明るい色合い(彩度は低いが明度が高い)なのですが、自然素材なので、軽井沢の建築基準的にもOKです。
【メリット】
- 職人技なので、腕のある方がやってくださるととても素敵
- 自然素材でありながら実は防水性、耐久性が高い
- 質感がいい
【デメリット】
- 湿気のある軽井沢だと、施工時に乾きにくく、工期が予想以上に長くなるかも
- 乾いている最中に色々混じり、仕上がりが残念な感じになる可能性も
- 素材自体の価格はピンキリで安価なものはあるが、職人の手が入るので技術料や人件費が乗ってくる→結局高価になる
そとん壁は、今回設計を依頼した伊礼智先生が得意とされる素材であり、そもそもすごく憧れがありました。
ガルバリウムが採用できないのであれば、せっかくだから、ちょっと高価でも、そとん壁がいい。
何よりも見た目がすごく素敵なのです。
そう思って、そとん壁の販売元、鹿児島の高千穂シラスさんにも、お問い合わせをしていただき、工期にも余裕があるし、十分可能であろうとお返事を貰っていました。
そんなあるとき、工務店の担当者さんが、軽井沢の街中を走って、そとん壁の建物を探してくださり、発見してくださいました。
追分の、そんなに築年数が経っていないであろう建物の一面に、苔か藻と思われるものが一面についていたと。
追分は、軽井沢の中でも西側のエリアで、我々の住む南軽井沢よりも湿気が少なく環境が良いエリアです。
その追分でも藻が生えるとは・・・恐るべし軽井沢の湿気!
藻が生えても、定期的に掃除をすればいいのですが、そもそものイニシャルコストが高いうえ、数年に一度となると、メンテナンスのコストも馬鹿になりません。
我が家では、そんな経緯で憧れの左官壁はあきらめました。
5.板張壁
左官壁と並行して候補に挙がったのが、板張り壁でした。
外壁に杉材に代表される、木の板を張っていくのが板張り壁です。
【メリット】
- 自然素材の風合い、木の温かみ
- 山荘っぽくなる
- 経年変化が楽しめる
- 県産材を使うと地域の森に還元できる(軽井沢といえばカラ松)
- メンテナンスが比較的容易(傷んだ部分だけ張り替えられる)
【デメリット】
- 割れや反りが出ることもある
- 軽井沢ではキツツキ被害が結構出ている
- ちゃんと軒を出さないと、腐ったりカビたり
もともと私の中では軽井沢の家といえば、吉村順三の山荘(実際はコンクリート混造ですが)をはじめとする、板張りの山小屋のようなイメージ。
建てようとする家のサイズ感も、いわゆる豪邸ではなく、30坪程度の家族4人で暮らせる小さな家、というイメージだったので、板張り壁の山小屋のような雰囲気は、すごくピンときました。
また、板張り壁でカラ松などの県産材を利用すれば、地域の森に還元することもできます。
木を切ってしまうので、一見環境にやさしくないような気がしますが、実は今、日本の森は育ち切ってしまって、伐採期(CO2の固定もこれ以上しない状態)の状態に入っているということです。
それを伐採して、はげ山のまま放置しないで森をはぐくんでいけるかどうか、この後ちゃんと植林をして、また森を育てていけるかどうかは、私たち消費者がちゃんとそこにお金をかけて、木材を利用できるかにかかっているそうです。
これからこの地域に住むにあたって、そんな取り組みに貢献できるのはとても素敵なことのような気がしました。
カラ松は、軽井沢が避暑地として開拓されたころから多く植えられて来た木で、軽井沢ゆかりの樹木でもあります。
私個人の思い出ですが、家の敷地の庭にもたくさんあり、子供のころから親しんだ木でもありました。落葉松の名の通り、冬にはたくさんの葉を落とし、いい匂いのふかふかのクッションになってくれます。庭でバーベキューをするときに、ちょっと混ぜて、いい匂いの煙を出すというイタズラもしていました。
北原白秋の、落葉松(カラ松)の詩「落葉松の林を出でて~」というのが好きだったこともあります。
そんなことをひっくるめて、軽井沢に移住するにあたり、カラ松の外壁の家に住むのは、私にとって、憧れを体現するような素敵なアイデアでした。
【キツツキ対策】
ただ心配なのが、キツツキの被害です。
キツツキは、突然森の中に現れた木肌を、木だと思って、つついて穴をあけてしまうそうです。
キツツキのつつく力は強力で、木の模様の窯業系のサイディングにも、穴をあけた強者がいるとのことでした。キツツキすごい!
そんなわけで、ご相談していた5社の工務店の中の1社の方にも、外装は絶対ガルバリウム鋼板がいいと思いますとアドバイスいただいていました。
ただ、伊礼先生のお話では、板張りの外装にも解決策はあって、木の外装の内側に鉄板を挟んでおくことで、キツツキは突くけど、鉄板に当たると止まってしまい、それ以上進むことはないとのことでした。
実は吉村順三の軽井沢の山荘の木の外装の下にも鉄板が隠されていて、あんなに森の中に佇む山荘、というロケーションでもキツツキから家は守られているとのこと。(伊礼先生は吉村先生のお弟子さんの奥村昭雄先生のお弟子さん。関係者だからこそ知る、貴重な情報!)
ただ、その方法だと、かなりお値段が上がってしまうとのことでした。
我々の目的は、あくまでコスパの良い家に住むこと・・・
工務店の方に相談すると、鉄板の無いまま実際につつかれても、外壁の内側の防水透湿シートまでは通気層という空間があり、キツツキがそこまで破る可能性は低いとのこと。
それだったらその穴の部分だけの張替えで修復が済むため、比較的安価で済むこと。など教えていただきました。
また実際、我々の敷地周囲のお宅をチェックしたり、他の板張りのお客さんにも話を聞いてくださり(すごい労力、本当に感謝です)
- 敷地周囲にはキツツキ被害にあっている板張りは無い
- 常に人の気配のする定住者の家はつつきにくい
- 騒がしい子供のいる家ならなおさら
とのことで、そこまでリスクも高くなく、もし被害にあっても板張りならば対応が容易ということが確認できました。
また別荘建築で絶対にキツツキにやられたくない、という場合でも、板張りの下に鉄板を施工すればいいということがわかりました。
【割れ反り・腐れカビ】
板張りは、天然素材ですが、丁寧に施工すれば持ちはとてもいいそうです。
確かに、法隆寺とか、木造でもしっかり長く残っている建築ありますもんね。
反ったり割れたりはするが、しっかりと乾燥させた木材を使えば大丈夫。
腐りやカビも、しっかり軒を出して、保護塗装をすれば大丈夫。
そんなわけで、我が家は木材の質や扱いに定評のある、美し信州建設さんに建設をお願いをしました。
価格はそとん壁と同程度だそうです。
やはり、いいものはお金がかかるのですね。
他を削っても、ここはかけるべきお金と、我が家は板張りを選択しました。
※補足:県産材を使うと「信州健康ゼロエネ住宅助成金」の対象となり、補助金が出るので、施工費用を補填することができます。
まとめ
どの素材もメリットデメリットはありますが、湿気、落葉、寒冷地など、土地の条件で、都市部と比較してデメリットが強調される傾向です。
軽井沢での外壁は、基本的には建築基準に沿っていれば、好きなものを選んでOKです。
それぞれの素材をしっかり知ったうえで、自分の感性に合うものを選ぶのが、幸せな暮らしの秘訣です!